東京高等裁判所 昭和53年(く)338号 決定 1978年8月16日
少年 Y・T(昭三四・四・二八生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告申立の趣意は、少年作成名義の抗告申立書に記載されたとおりであるが、要するに、少年を中等少年院に送致する旨の原決定の処分は著しく不当である、というのである。
一件記録によれば、イ少年は、道路交通法違反、窃盗保護事件により、昭和五三年三月一日、新潟家庭裁判所長岡支部において保護観察に付する旨の決定の言渡を受け、それ以来新潟保護観察所の保護観察を受けていたものであるところ、同観察所の特別遵守事項は「(1)無免許運転は絶対にしないこと、(2)定職についてまじめに働くこと、(3)他人の物には手を出さないこと、(4)毎月担当保護司を訪ね指導を受けること」と定められていたこと、ロしかしながら、少年の更生への決意は長続きせず、保護司の世話により鉄筋工の仕事につきながら無断欠勤を繰返し、同年三月末にははやくもやめてしまい、同年四月上旬には父母に無断で家出をして友人のアパートに止宿して夜遊びに興じるなど無為徒食の生活を続けたこと、ハ同年五月初旬、クラブのボーイとして働き始めたとはいうものの、六月一五日ころには遅刻が多いことから解雇されてしまつたこと、ニこのような生活を続け、同じように徒食している友人との遊興の間に、原決定の非行事実第一、第二の各所為に及んだものであること、ホまた、家出以後、父母への連絡や、担当保護司方への連絡も怠つてきたこと、が認められる。このような、前件により保護観察に付されてからの少年の行状、生活態度に、同じく一件記録によりうかがわれる父母の監護能力、少年の性格、これまでの生活歴、非行歴、交遊関係等を総合すると、原決定が指摘するとおり、少年の処遇については、もはや在宅での保護は限界にきており、このうえは、施設内において少年に欠けている遵法精神を涵養し、勤労意欲を高め、生活態度の改善を図る必要があるものと認められるのであり、少年を中等少年院へ送致することは、やむをえないところである(もつとも、当裁判所は、本件非行の態様、程度、少年のこれまでの処遇歴、少年の性格等からすると、一般短期処遇で足るものと思料する)。したがつて、原決定の処分は著しく不当であるとは認められないのであり、論旨は理由がない。
よつて、本件抗告は理由がないから、少年法三三条一項によりこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 石崎四郎 裁判官 森眞樹 中野久利)
参考一 本体調査報告書及び鑑別結果通知書(昭五三少三七三号・同二三五二号・同二三九一号)<省略>
参考二 前件調査票及び鑑別結果通知書(昭五二(少)三二八四号・昭五三(少)一五九号)<省略>